三笑亭夢之助さんの件について

少し乗り遅れたけれど、三笑亭夢之助さんが手話通訳に退場を求める発言をした件について。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071031-00000020-mai-soci

島根県安来市民会館で9月17日に開かれた市主催の敬老会で、独演会をしていた落語家の三笑亭夢之助さんが、舞台に立つ手話通訳者に「気が散る」などと退場を求める発言をしていたことが分かった。

独演会開始後5分ほど過ぎたころ、夢之助さんが「落語は話し言葉でするもので、手話に変えられるものではない」と発言。更に「この会場は聞こえる方が大半ですよね。手話の方がおられると気が散りますし、皆さんも散りますよね」と話し、会場からは笑い声が聞こえたという。



安来市が事前調整をしなかった事について批判されたりもしているけれど、僕も自分が担当者だったら、事前調整が必要と感じていたかどうかわからない。悪い話であれば、後で揉めるのが嫌だから、予め調整をしておこうと思うけれど、この様な手話通訳を置くのは基本的に「良い話」だから。それで、事前調整をしておくべき事柄であるという意識が出てこなかったんじゃないかと思う。ただ、夢之助さんにとってはそれは残念ながら「良い話」ではなかった様だった。


「落語は話し言葉でするもので手話に変えられるものではない」との発言を読んで、もしその言葉を額面どおり受け取るのなら、行政主催のイベントで落語をするのは今後難しくなったりしないかと思った。行政主催のイベントは、今回の様な福祉関係のイベントも多いし、また、「(安来市では)大きな講演会では手話通訳者をつけている」という記事にもある様に、障害を持つ方への配慮は当然に考慮に入れる必要がある。


そうすると、行政がイベントとして実施する際に、もし落語が「手話に変えられるものではない」なら、演目として選ぶのは不都合な面が多いから、手話に変えられる他の演芸を選ぶ事が多くなる様に思う。それは仕方がない。行政がイベントで実施するのは必ずしも落語でなければならないという必要性はないのだし。外国語の場合に話を変えてみても、通訳が難しい言語による講演会が開催しにくいのは当然の話である。


春風亭昇太さんによると、落語家の収入は、地方にある市民会館などでの収入が結構多い(だから市町村合併して欲しくない)様である。どの程度一般化できるかわからないけど、行政が有力な顧客の一つである事は確かなんだろう。手話に変えられるものではないという自負も結構だけれど、それを突き通すのであれば、有力な顧客の一つである行政からの仕事も失う事にもつながって、結構大変なんじゃないかと思う。僕が落語家であったら、儲からない(そしてあまり正しそうにない)自負は捨てるけどね。