愛国心と理念について

毎回購入している渋谷陽一さん編集のSIGHT冬号に掲載されている小熊英二さんのインタビューから抜粋。日本の保守派の「掲げる理念の無さ」について。

たいていの近代国家は建国の理念や建国の日を持っている。フランスだったら自由・平等・博愛という建国理念がナショナリズムの核だし、革命記念日が建国の日です。アメリカなら独立宣言が建国理念で、独立戦争に勝った日が建国の日。

ところが日本はそういう近代的ナショナリズムが作れなかった。

だから他の国では、保守派であっても「わが建国の理念は世界に冠たるものだ」という人も多いんです。

だけど日本の保守派に建国の理念を憲法素案や教育基本法案に書いてみろと言っても材料が何もない。だから、家族とか伝統とか公益とかしか書けない。



「わが建国の理念は世界に冠たるものだ」と主張できないから、「江戸時代の経済や数学は世界に冠たるものだ」と主張するのでしょうか。愛国心(教育)を主張する人達が、「歴史」「伝統」「文化」にはよく触れるけれども、わが国の「理念」についてはあまり触れられないのは、前々から気になっていました。


むしろ、左翼の人達が戦後の理念を誇る様な言い方をされてますよね。「世界に誇る平和憲法」とか。


僕も、他国と差別化できる国家の理念は何かと考えたら、やっぱりまず「平和」が思い浮かびますけど、そういえば見事にスルーされていたな…。


国家の理念を誇るとするならば、現状ではどうしてもそれは戦後=日本国憲法の理念になってしまうので、保守派の人達は、それにはなかなか抵抗があるのでしょうか。かといって、さすがに大日本帝国の理念をおおっぴらに持ち出すわけにはいかないから、その結果、愛国心の対象から「理念」が抜け落ちると。そんな感じなのかも。