「上の指示」と「家畜防疫員の判断」

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100714-OYT1T01291.htm
http://d.hatena.ne.jp/semi_colon/20100715/p1


この記事については、出てきたタイミングとかが色々邪推されたりしているけれど、出てくるタイミングに政治的な意図があろうがなかろうが、特にこの手の不祥事系の記事を出す以上、読売は防疫員の発言内容などの確認は確実にとっているはずだから、25日当日の対応とか発言とかの情報自体はまず事実なんだろうと思う。


それでいくつかの新聞記事をネットで見たのだけど、県のコメントが「現地の家畜防疫員の判断」を強調ばかりしていて、少しやるせなかった。

  • 「軽微な症状だったので、口蹄疫ではないと判断した。殺処分と埋却の権限は県の防疫員にあり、対応に問題はない」(読売)
  • 県は「現地の家畜防疫員が県の現地対策本部と協議し、疫学情報や臨床症状に基づいて口蹄疫ではないと判断した」と説明(朝日
  • 県は「家畜防疫員が口蹄疫の特徴的病変ではないと判断した」と説明、対応に問題はないと主張(西日本



読売の記事では、獣医師から検査した方が良いという意見が相次いで、家畜防疫員は本部に確認し、その結果「上の指示で殺処分を続ける」と言って殺処分を行ったらしい。一方、県の主張では「家畜防疫員の判断」で口蹄疫でないと判断し、殺処分をした事になっている。しかし、自分で判断したのなら、果たして「上の指示で」と獣医師に言うのだろうか。そもそも実質的な判断の権限は「上」側にあって、家畜防疫員はその指示に従っただけではないのか。


僕も東国原知事はあまり好きではないので、この読売の記事に乗せられている部分はあるのかもしれないが、この事件で僕は思ったのは、「よくあるとかげの尻尾切りだな」というのと、同じように「上の指示」で働く地方公務員なので「明日は我が身かもしれない」という思いである。本件では、農水大臣は詳細に調査をすると言っているが、どんなに調査をしても県の説明の矛盾点が全て家畜防疫員のせいで片付けられそうな気がする。何故獣医師が口蹄疫の典型的な症状だと思う病状を軽微な症状だと判断したのか。家畜防疫員がそう判断したから。家畜防疫員が判断したのであれば、なぜ「上の指示で」と獣医師に伝えたのか。家畜防疫員の言い間違い。


宮崎県には、是非6月25日の協議の内容がどの様なものであったかを公開して頂きたいと思う。責任転嫁や情報の隠ぺいは組織がもつ宿痾の部分もあるけれども、知事が責任回避主義、隠ぺい主義は改めるべきだと仰られているから、それが情報戦の一環から出た言葉でなければ、きっと実際の協議の内容を出して頂けるのだろう。