自治体の税収と支出を比べる印象操作

http://kml.tumblr.com/post/1452236785/300-338-7000-1-3000
我が国の地方自治体は、地方交付税など、国から交付されるお金が多い一方で、収入における地方税(自前の収入)の割合が3割程度と少なく、いわゆる『3割自治』と言われてきましたが、その収入に占める割合が少ない、地方税の税収金額と、支出の額を比較することにより、その支出が、制度として破綻間近であるほど多額であるかの様に印象づける、素人騙しのテクニックですね。上の足立区の例もそうですが、この場合、当該市区町村の全体の収入はどのくらいになるのかについては、往々にして明らかにされることはありません。


かの阿久根市竹原市長も、職員の給与明細を公表する際に「阿久根市税収20億円のうち17億3000万円が人件費」とか言っていたわけですが、これも同じテクニックです。
阿久根市の歳入状況
阿久根市の歳出状況


上の資料は当の阿久根市の歳入及び歳出状況ですが、実際の阿久根市の収入は、平成21年度で107億円あります。小規模な自治体ほど、収入における地方税の割合は下がる傾向にありますが、阿久根市も同様で、収入における市税の割合は18%になっています。


ここで「阿久根市の収入107億円のうち18億円が人件費だ」と言っても、全然衝撃的ではありませんし、むしろ人件費の割合としては少ないのではないかと印象を与えてしまいかねません。そこで、収入の5分の1にも満たない税収を持ち出して「税収20億円のうち18億円が人件費だ」と言うことにより、さも人件費で市の財政が圧迫されているかの様に見せかけるわけですね。実際は「全収入の5分の1(にも満たない税収)を下回っている人件費」なのですが、全収入の部分は隠されるわけです。


と言う事で、地方行政の関係で「自治体の税収と比べてこれだけ支出がある」とかいう主張が出たら、まずは印象操作を疑った方が良い様に思います。そもそも、その支出がその自治体の財政を圧迫していることを問題視するのなら、比べられる対象は、その自治体の収入になるのが当然で、税収に限定することからしておかしいわけです。まあ、ネットで検索したら、阿久根市の上記の「税収20億円のうち人件費17億3000万円」も色々と流通している様で、手法としては効果的なのは認めざるを得ないのですが。