「府財政を短期間で救った」芝居の終幕の件

大阪府の財政の話は何回かブログに書いてきたのですが、なんか決着がついてしまった様な感じですね。
http://www.pref.osaka.jp/koho/chiji/230712_fushi.html

そのため、実質公債費比率は、景気対策期に大量発行した府債(借金)の返済が完了するまでは、これから、ますます大きくなっていくという構造的な課題を抱えています。

大阪府の平成21年度の実質公債費比率は17.2%ですが、平松市長が指摘されているように、平成20年度の16.6%より悪化しています。現在の試算では、今後、更に大きくなり、このまま何も対策を講じなければ、平成29年度には、25%を超え、財政健全化法で府民サービスの提供に制約が課せられる財政健全化団体に転落してしまいます。



上の文章は、大阪市から「府は実質公債費比率が上昇しているやないか」と突っ込みを入れられた事に対する、橋下知事側の返答の様なものでして、本人も数値が悪化していることを認めているわけですが、しかしながら、一方で橋下知事ツイッターではこの様に語ってきました。


橋下徹 on Twitter: "予算なんとかまとまりそうです。財政規律を厳格に守り、知事就任時の財政破綻状態から脱け出し、教育と治安へ思い切った投資もできました。産業政策、都市魅力向上も刺激的ですよ。最後のまとめ、職員、頑張って!最高の予算になりそうです。今から、かまぼこ、つまみます!"

予算なんとかまとまりそうです。財政規律を厳格に守り、知事就任時の財政破綻状態から脱け出し、教育と治安へ思い切った投資もできました。



橋下徹 on Twitter: "フラフープ、3・4・6番目がうまい。特に3番目。1番目は爆睡。さて、明日は今任期最終仕上げの当初予算の発表。就任直後の財政破綻状況を考えると隔世の感です。"

さて、明日は今任期最終仕上げの当初予算の発表。就任直後の財政破綻状況を考えると隔世の感です。



一方では、実質公債費比率が今後も上昇し、何も対策を講じなければ、今後財政健全化団体に転落する状況と自分で認めておきながら、一方では「財政破綻状態から脱け出し」「就任直後の財政破綻状況を考えると隔世の感」と自賛してきたわけで、一体どっちなんだと突っ込みたくなりますが、結局は、予算の黒字化をダシにして振る舞ってきた「大阪府の財政を短期間で救った」という芝居をこれ以上演じきれなくなったという事の様に思います。


これも何回も書いてきましたが、予算の黒字化それ自体は、自治体の予算は借金も収入に含まれますので、あまり意味がないことなのですが、大きく報道された事もあってか、さも大阪府の財政が短期間で良くなったと誤解する人が続出しましたし、また、ツイッター等で見る限り、当の橋下知事本人もその様に振る舞ってきました。


そして自らを改革者として、先の選挙でも、大阪市を「反改革」であるかの様に攻撃してきたわけですが、当の大阪市から、あまり表に出していなかった、都合の悪い数値を指摘されてしまい、旗色がかなり悪くなってしまったという事なのでしょう。そして「府も市も多額の借金を抱えているのは事実です。ただ、それを互いに批判し合っても府民・市民はシラケてしまうでしょう。」と話を終わらせようとする。かつてあれほど借金5兆円と連呼し、府が多額の借金を抱えている事を問題にしてきたわけですが。


しかし、別の話になりますが、こんな財政状況なのに「大阪府の財政を短期間で立て直した」と書いてしまう某社の公民教科書って何なんですかね…。巷の報道だけを参考にして、資料や数値を確認もせずに、教科書を書いている様にしか思えない。まあ、歴史教科書のことを考えるとさもありなんといった感じなのかもしれませんが。

逆ニーメラーあるいはニーメラーのすすめ

橋下徹 on Twitter: "金曜日、土曜日の府議会採決は維新の会の強行採決と報じられている。しかし議案の中身を見て欲しい。府民に義務を課す案件は一つもない。議員や大阪市役所、そして一部教員団体というこれまで既得権を謳歌していた所への直球切り込み案件のみ。これは凄まじい権力闘争です。綺麗ごとでは何も進まない。"

金曜日、土曜日の府議会採決は維新の会の強行採決と報じられている。しかし議案の中身を見て欲しい。府民に義務を課す案件は一つもない。



橋下徹 on Twitter: "議員の身分を失わせる定数削減案と教員(公務員)の行動に枠をはめる議案。単独採決しても府民無視でも何でもありません。僕は、首相公選制が日本の政治に不可欠だと思っている。今の議院内閣制だと政治は何も決められない。"

議員の身分を失わせる定数削減案と教員(公務員)の行動に枠をはめる議案。単独採決しても府民無視でも何でもありません。



我々が攻撃しているのはあなた方ではない、彼らなのだ、だからあなた方が不安に感じたり、問題視する必要はない。ニーメラーさんのコピペの「私」は、「攻撃されているのは自分ではなかったから何もしなかった」わけですが、「攻撃されているのは府民(自分)ではないのだから、何でもないでしょう?」と「私」に問いかける様なこのツイートは、「逆ニーメラー」「ニーメラーのすすめ」とも呼べるのかもしれません。


教員も大阪市役所の職員も議員の人達も、その殆どが大阪府民であるわけですが、上のツイートを見ると、さも彼らは府民ではないかの様です。(時々観測気球的な発言をするとしても、)大多数の府民を攻撃すれば支持を失いますから、今後も「ナチス」の攻撃は少数者に向かって行われるのでしょう。そして、その攻撃に選ばれた少数者は「府民」から除外され、大多数の人達に対して「攻撃されるのは府民ではないのだから、問題ない」と「ナチス」は言う。


もし、表現規制の強化がされる時が来るとするなら、橋下知事はこの様にツイートするのではないでしょうか。「一部の特異な趣味を持つ人達の行動に枠をはめる議案。府民に義務を課す案件ではありません」と。そして、晴れて表現規制条例は早々に改正され、殆ど橋下知事の人気は低下しないのでしょう。大多数の府民にとって、「一般府民と公務員は違う」のと同じ様に、「一般府民と一部の特異な趣味を持つ人達は違う」わけですので。

府庁職員の組織の一員の自覚がない行動例

橋下徹 on Twitter: "9月には公務員全般を対象に職務命令に違反した場合の処分基準を定める条例を成立させたいと思います。府庁の職員で職務命令に違反したという事例は聞いたことがありません。ところが教育現場では平気で職務命令に違反する。これが教育行政の統治機構がボロボロという証左です。"

9月には公務員全般を対象に職務命令に違反した場合の処分基準を定める条例を成立させたいと思います。府庁の職員で職務命令に違反したという事例は聞いたことがありません。ところが教育現場では平気で職務命令に違反する。これが教育行政の統治機構がボロボロという証左です。



僕も同じ公務員なわけですが、僕もこの5月は平気で上司の命令に違反しまくっていました。任命権者から、勤務時間以外の時間に勤務することを命じられてもいないのに、残業したり、休日に出勤したりしていたのです(民間ではサービス残業というみたいですが)。ゴールデンウイークも結局毎日出勤していましたし。


夜の大阪府庁に行けば、時間外勤務命令を出されてもいないのに、勝手に勤務している府職員が沢山おられると思いますが、9月からは時間外勤務命令が出ない日は、早々に帰宅された方が良い様に思います。なんせ9月からは公務員全般を対象に、職務命令に違反した場合の処分基準が定められるみたいですので。


上のツイートを見る限り、橋下知事はあまりこの様な状況をご存知ではない様ですが、他のツイートで「組織の一員は上司からの命令に従うのが当たり前」と何回も発言されているようなので、時間外勤務命令が出ていないのに勝手に勤務する、組織の一員の自覚がない不良公務員に対しても、事実が判明すれば、きっと厳しく対応される事でしょう。


式典に数回起立しない程度で免職になるのでしたら、時間外勤務命令が発せられていないのに何回も時間外勤務する府職員も相応の処分を受ける可能性が高いのではないでしょうか。大阪府職員も仕事が残っているのに、帰るのは心が重いでしょうが、仕方ありません。「組織なんだから管理があるのは当たり前」ですし、「管理が嫌なら公務員を辞めて自由業にな」るべきですし、「納税者は、自由業の公務員なんぞを養うために税金を納めているんではない」のですから…。

大阪府の君が代条例案の件

http://www.asahi.com/national/update/0513/OSK201105130188.html
http://alfalfalfa.com/archives/3274394.html


この件については、東京都が前例としてありますので、どうしても最近大きな問題となった表現規制問題と絡めて考えたくなるのですが、橋下知事が更なる表現規制青少年健全育成条例の改正を支持獲得の資源として利用しようとした時、その種の攻撃は東京都の場合よりはるかに容易である様な気がします。なんせ自分の意のままに動く大阪維新の会過半数以上を占めているわけですから。どれだけ条例の問題点を指摘したり、反対の声を挙げても意味がなくて、今回の君が代条例案が粛々と可決される様に、表現規制条例案も粛々と可決されるだけです。それこそ「慎重な運用を求める」という付帯決議すらつかないでしょう。


アルファルファ界隈ではサヨク叩きや公務員叩きに酔っている様ですが、もしその人達が表現規制に反対であるのなら、そんなに無邪気に酔っていていいのかと言う気もするんですけどね。東京都という痛い前例がありますし、橋下知事も今までの振る舞いを見ると、表現規制問題に本格的に乗り出す可能性は十分にある様な気がするのですが。


でも文字どおり、左翼=共産主義者が攻撃されているというのに、ネットで恒例のニーメラーさんの文章は全然見かけせんね。この君が代条例案が実際に議会を通る時も殆ど出てこないのでしょうけど。自分達を共産主義者=左翼には喩えるが、当の左翼が攻撃されている時は沈黙するニーメラーさんのコピペ。


まあ、それにしても議会で大阪維新の会過半数をとって最初に目立った事をするのがこれですか。ブクマでもありましたが、昔の光栄三国志諸葛亮の様に、「ほかにすることはないのですか」と言いたくなるのですが、こんな事しか出来ないのでしょうね、多分。

嘘でもないが本当でもない

橋下知事のツイートに対するツッコミの続き。
橋下徹 on Twitter: "減債基金からの借り入れを止めて、今では通常の借金返済に加えてこの基金の返済もやっています。赤字債の退職手当債は発行禁止、その上で貯金としての基金を760億円積み立てました。11年ぶりの赤字予算、決算からの脱却。それでも教育等に数百億円単位で金をぶち込みました。"

減債基金からの借り入れを止めて、今では通常の借金返済に加えてこの基金の返済もやっています。赤字債の退職手当債は発行禁止、その上で貯金としての基金を760億円積み立てました。11年ぶりの赤字予算、決算からの脱却。それでも教育等に数百億円単位で金をぶち込みました。



上のツイートだけ見ると、橋下知事はもの凄く結果を出している様に見えるわけでして、実際はそれは違うのですが、では彼が上のツイートで嘘をついているかと言えば、確かに彼は嘘をついてはいないんですよね(明らかに嘘のツイートも他にありますが)。他の重要な情報を伝えていないため、ツイートを読んだ人の多くが誤解して受け取ってしまう様になっているだけで。


このツイートの「貯金としての基金」というのは、財政調整基金基金のことを指していまして、確かに23年度当初予算の段階では769億円積み立てられています。ですから、それ単体では確かに嘘ではありません。


しかし、これには他に重要な情報がありまして、平成22年度予算において、実際には4152億円、通常債に限っても827億円の借金をしているのですが、その事については語られないわけです。実際にお金が余ったとしても、それ以上の借金をその年にしていたのであれば、意味あいもその評価も変わってくるかと思うのですが、そこには触れず、760億円お金が余って積み立てたという事だけが伝えられる。


「赤字予算、決算からの脱却」についても同じ話でして、自治体の予算は借金も収入に含まれるため、府債を数多く発行すれば黒字になりますので、赤字・黒字それ自体に大きな意味はないのですが、その情報については触れず、大阪府が赤字予算から脱却したということだけが伝えられる。で、このツイートを読んだ読者の多くは、760億円もお金が余り、黒字決算でさも財政状況が改善したかの様に誤解してしまうわけです。嘘をつかなくても、一部の情報を隠しさえすれば、本当でもないことを信じさせるのは簡単だというお話。


橋下知事は、「メディアは一部分しか伝えない」とツイッターを始めたらしいですが、一部分しか伝えないのは当の自分のツイートも同じだったと言うことですね。分かってて伝えないのであれば悪質だと思いますし、分かっていないから伝えていないのであれば、財政状況の初歩的な事も知らないという事ですから、さすがに知事として能力的にどうなのかと思います。おそらく確実に前者だとは思いますが。

橋下知事の「役所は人件費を全く考慮していない」というツイートの件

橋下徹 on Twitter: "コストを正確に把握するなど経営の根幹。コストを把握せずしてコスト意識は持てません。役所の予算主義の弊害は、実際にかかる金の話ばかりで自分たちの人件費が全く考慮されていない。フルコストで計算していないんだよね。この原因は、役所の会計ルール。"

コストを正確に把握するなど経営の根幹。コストを把握せずしてコスト意識は持てません。役所の予算主義の弊害は、実際にかかる金の話ばかりで自分たちの人件費が全く考慮されていない。フルコストで計算していないんだよね。この原因は、役所の会計ルール。



何を根拠に上記の様な事を言っているのかわかりませんが、「役所が職員の人件費を全く考慮していない」というのは全くの嘘で、他の自治体において、事業評価や予算要求に際して、その事業に係る人件費を考慮している例は容易に見つける事ができます。


平成22年度事務事業評価の結果について - 愛知県

事務事業評価は、事務事業という県行政の活動において最も基礎となる単位で評価を実施し、事務事業の見直しへの活用や予算要求の参考とするものです。今年度は、1,664事務事業(昨年度は1,661)について評価を実施しました。



「事業仕分け・評価」について 京都府ホームページ

予算編成時において、職員自らが府民の視点でニーズを踏まえた必要性、事業主体や手法(協働等検討)、事業目標やコストをもとにした効果などを検証した事業仕分け・評価調書( PDFファイル ,81KB)を作成し、予算要求へ反映する。



上に愛知県と京都府の例を挙げましたが、どちらも事務事業の評価調書の項目に職員の人件費を記載する項目があって、その人件費を含めたコストで事業評価や予算要求を行っています。というか、人件費を含めて施策を評価する事業評価制度は、僕の勤め先も含めて、10年ぐらい前にブームとなって各自治体の中で数多く導入されてきました。その当時ならまだわかりますが、制度が定着した今になって、当の行政内部の人間から、この様な「役所は人件費を全く考慮していない」論が出てくるのには少し驚きました。


「先進的で改革に取り組んでいる自分」と「遅れていて改革が進んでいない他者」という構図を描きたいために、この様な言い方をするのかもしれませんが、このツイートを見た地方行政の状況をあまり知らない人達の多くは騙されてしまうわけで。改革者を自演するためにダシに使われる他の自治体にとっては、本当に迷惑な話ですね。大阪市は大変なんだろうなと同情したくなってきます。

大阪維新の会のデータの恣意的な読み替え例

橋下ハシズムの妄想と戦う、平松大阪市長のことば - umeten's blog経由で知った平松市長の発言。

データの恣意的な読み替え、論理のすり替え、発言のぶれなど、「都構想」を唱える人たちへの反論はまだいくらでもありますが、今はこれぐらいにしておきましょう。



確かに、僕も「都構想」を唱える人たちが出すデータには違和感を持っていました。


http://www.irahara.jp/goaisatu.html

答えは「お金がない」から、やりたい事が出来ないのです。
大阪府の負債は7兆2千億円。大阪市の負債は6兆円。

様々なものが積み重なり、このままだと2015年に、夕張市同様の財政破綻する試算です。
大阪府も2016年に、早期健全化団体に転落する試算です。
大阪は、明らかにこのままではいけないのです。



大阪府の府債は前から一般的に5兆円と言われていて、今年度の予算書の記者発表資料では5兆2500億円程度なのですが、大阪維新の会のこの方は何故かその数値を採用せず、大阪府の負債は7兆2000億円だと主張されているようです。2兆円もの差。
で見ると、「※大阪府「平成19年度バランスシート・行政コスト計算書の試算」連結バランスシート…による」の文字が。予算上の金額ではなくて試算で出てきた金額を使っているわけですね。


「平成19年度バランスシート・行政コスト計算書の試算」
で、それはまあ良いとしても、この7兆2000億円という数値は、当該資料の18ページ「大阪府の連結バランスシート」の負債の数値を使っているのですが、引っ掛かるのはこのページの最下部にある留意事項。「この連結バランスシートは、当団体と連携協力して行政サービスを実施している関係団体を連結して、一つの行政主体であるとみなして作成したものであり、関係団体の資産及び負債等が当団体に帰属するものではない点にご留意下さい。」と書かれています。わざわざ大阪府に帰属しないと明記されている負債を、大阪府の負債に含めるのっておかしいんじゃないでしょうか?「当団体に帰属するものではない」というのを「当団体に帰属する」と読み替えているの?


これは推測ですが、大阪維新の会がこの資料の数値を使うのは、負債の金額が一番大きい資料だったからではないかと思います。「このままではいけない」という危機感を煽るために。危機感を煽るには、府や市の負債は大きければ大きい程都合が良いですから。


でも、こうやって危機感を煽るのはいいですけど、橋下知事が財政を再建したという手柄話と矛盾するんじゃないかと思うんですけどね。大阪府は黒字になったはずなのに、何故2016年度に早期健全化団体に転落するの?という話になりますし。そこで自治体の予算において黒字に意味がない事がバレるという。自分達が利用したい橋下神話を自分達で暴くの図。